居酒屋で過ごす時間って、決して特別ではないのにどこか日常から離れたものに感じられて大好きです。そこでぼんやりと「自分が作った理想の居酒屋でお客さんに楽しんでもらえたら、どんなに素敵だろう」と考えたりすることがあります。
筆者のような酔っ払いのたわ言レベルではなく、「いつか居酒屋を経営したい」と夢を持っている方は多いのではないでしょうか。
ただ、どんな夢も「最初の一歩をどう踏み出したらいいかわからない」という段階はあると思います。
そこでこの記事では、「起業シリーズ第3弾」として、居酒屋開業に向けた最初の一歩とは何か、必要な準備、費用の目安をわかりやすく解説します。
理想のお店づくりに向けて、今日からできる小さな一歩を見つけましょう。
居酒屋開業を考え始めたら、まずやること
居酒屋を開くために最初にやるべきことは、なんと言っても「どんなお店にしたいか」を明確にすることです。
コンセプトやメニュー、ターゲット、立地、資金計画など、開業に向けて整理・明確化していきます。
それぞれのステップについて詳しくみていきましょう。
どんなお店を作りたいか、コンセプトを固めよう
コンセプトづくりでは、次の3点を整理します。
- どんな客層に来てほしいお店か(ターゲット)
- どんな料理やお酒を出すのか(提供内容)
- どんな雰囲気で過ごしてもらうか(店舗イメージ)
たとえば、会社帰りのサラリーマン向けなら立地は駅近、価格は手頃に。
女性客を意識するなら、清潔感のある内装やおしゃれなドリンクメニューも効果的です。
焼き鳥専門、海鮮、創作料理など、提供する料理ジャンルでお店の個性を出すのも大切です。
こうして方向性を定めることで、店名や内装、制服、メニューのデザインまで自然とイメージが固まっていきます。
Point: コンセプトはお店の「軸」。誰に・何を・どう届けるかを明確にしてから動き出そう。
あなたの「理想の居酒屋」診断テスト
早速居酒屋を開く夢への第一歩として、まずは「自分がどんな居酒屋を作りたいのか」想像力を膨らませてみましょう!
――3つの質問に答えてください。
- お客さんにはどんな時間を過ごしてほしい?
A. にぎやかで笑い声の絶えない時間
B. ゆっくり語り合える落ち着いた時間
C. お酒や料理をじっくり味わう時間 - お店の雰囲気をひとことで言うと?
A. 活気ある“ザ・居酒屋”
B. 隠れ家のような静けさ
C. 素材やお酒へのこだわりを感じる空間 - 自分がいちばん大切にしたいことは?
A. 人とのつながり
B. 居心地の良さ
C. 味への探求
▼結果はこちら
- Aが多い方:ワイワイ系居酒屋タイプ
→ 賑やかな空間づくりが得意。駅近で気軽に立ち寄れるお店にぴったり。 - Bが多い方:隠れ家系居酒屋タイプ
→ 空間の雰囲気づくりが得意。照明やBGMにこだわると◎。 - Cが多い方:こだわり料理系居酒屋タイプ
→ 食材の質やメニューが強み。競合と差別化できる酒・料理を研究しよう。
どんなお店を作りたいか、言語化しイメージを膨らませることでよりリアリティが持てたのではないでしょうか。
ここからさらに、自分のお気に入りのお店やはやりのお店の外観・内装・メニュー・客層などを研究し、ディテールを固めていってください。
事業計画・資金計画を立てる
コンセプトが固まったら、次は事業計画と資金計画を考えます。
金融機関から融資を受ける予定がある場合は、具体的な数字を入れた事業計画書をしっかり作ることが求められます。
自己資金で開業する場合でも、簡単な計画を立てておくと安心です。
想定する開業資金や、毎月の家賃・仕入れ・人件費などをざっくり書き出すだけでも、開業後の運営イメージがつかみやすくなります。
居酒屋の開業資金は平均で約600万円、規模によっては1,000万円を超えるケースもあります。
Point: 自己資金でも簡易的な事業計画・資金計画を立てておくと安心。居酒屋の開業資金は平均約600万円。
開業スケジュールを立てる
コンセプト設計からオープンまでは、最低でも半年〜1年ほどを見込むのが安心です。
特に酒類販売業免許などは申請から取得まで2〜3か月かかるため、スケジュールに余裕を持って進めましょう。
Point: 開業準備には最短6か月〜1年が必要。免許申請に2〜3か月かかることを想定して逆算しよう。
居酒屋を始めるのに必要な資格・手続き
居酒屋をオープンするには、いくつかの資格や免許、行政手続きが必要です。
どれも法律で定められているもので、準備を怠ると営業できない可能性があります。
取得や申請は、オープン予定日の2か月前を目安に始めておくと安心です。
主な資格・手続き一覧
| 名称 | 目的・内容 | 目安時期 | 取得・届出先 | |
| 必須 | 食品衛生責任者 | 食品を衛生的に扱うための資格。1店舗に1名以上設置義務あり | 開業2か月前〜 | 保健所(講習1日) |
| 必須 | 飲食店営業許可 | 店舗で飲食物を提供するために必要 | オープン10日前まで | 保健所 |
| 条件付き | 防火管理者 | 収容人数30人以上の店舗で必要。乙種1日/甲種2日講習 | 開業1〜2か月前 | 消防署 |
| 条件付き | 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書 | 深夜0時以降に酒を提供する場合に必要 | 営業開始10日前まで | 警察署 |
| 開業手続き | 個人事業の開業届 | 税務上の事業開始届。青色申告申請も同時がおすすめ | 開業日から1か月以内 | 税務署 |
食品衛生責任者資格
食品を扱うすべての店舗では、1店舗につき1名以上の「食品衛生責任者」を設置することが義務付けられています。
この資格がないと営業許可が下りないため、最優先で取得しましょう。
各自治体の保健所が実施する1日程度の講習を受ければ取得できます。
調理師や栄養士など、関連資格を持っている場合は講習が免除されます。
Point: 食品衛生責任者は1店舗に1名以上必須。講習は1日で受講可能。
飲食店営業許可
飲食物を提供するには、保健所からの営業許可が必要です。
店舗完成の10日前までに申請し、設備検査に合格すると許可証が交付されます。
申請書、店舗の構造図、食品衛生責任者の資格証など、いくつかの書類を提出します。
事前に保健所へ相談しておくと、必要書類の確認や検査予約がスムーズです。
Point: 営業許可はオープン10日前までに保健所へ申請。検査後に許可証が交付される。
防火管理者資格
店舗の収容人数が30人以上になる場合は、防火管理者を設置する義務があります。
講習は乙種なら1日/甲種なら2日で取得可能です。
資格取得後、所轄の消防署に防火管理者選任届を提出します。
Point: 収容人数30人以上で必要。講習は乙種1日/甲種2日が目安。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
午前0時以降もお酒を提供する場合は、警察署への届出が必要です。
営業開始の10日前までに「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出しましょう。
Point: 深夜営業をするなら、営業開始10日前までに警察署へ届出が必要。
個人事業の開業届
個人で居酒屋を経営する場合は、開業日から1か月以内に税務署へ「開業届」を提出します。
あわせて「青色申告承認申請書」を出しておくと、節税につながる青色申告ができます。
Point: 開業届は事業開始から1か月以内に税務署へ。青色申告の申請も同時がおすすめ。
居酒屋開業にかかるお金はどのくらい?
居酒屋の開業資金は、店舗の規模や立地、物件の状態によって大きく変わります。
平均的には600~700万円程度、規模によっては1,000万以上かかると考えておきましょう。
費用の目安一覧
| 内容 | 費用の目安 | 割合の目安 | 補足 | |
| 内外装工事費 | 店舗の内装・外装工事(壁・床・照明など) | 50万〜300万円 | 約40% | 最も費用がかかる項目 |
| 物件取得費 | 敷金・礼金・仲介手数料など | 50万〜300万円 | 約20% | 保証金は家賃の6〜12か月分が目安 |
| 厨房機器・設備費 | 冷蔵庫、コンロ、テーブル・椅子など | 150万〜450万円 | 約20% | 居抜き物件なら大幅に削減可能 |
| 開業準備費 | 広告、チラシ、手続きなど | 20万〜80万円 | 約20% | 集客準備・書類作成費など |
初期投資の目安と内訳
居酒屋開業の初期費用は、270万円〜1,120万円程度が一般的です。
このうち、最も大きな割合を占めるのが内外装工事費で、全体の約40%を占めます。
厨房機器や什器を新しくそろえる場合も費用が増えるため、居抜き物件を選ぶなど、初期費用を抑える工夫がポイントです。
Point:初期費用は270万〜1,120万円程度。内外装工事が全体の約40%を占める。
物件選びで変わる費用差
物件の種類によって開業資金は大きく変動します。
前テナントの内装や設備をそのまま使える居抜き物件なら、開業コストを抑えられます。
一方、何もない状態から工事するスケルトン物件は費用が高くなりますが、理想の内装を実現しやすいメリットがあります。
10坪前後(席数10〜16席)の居酒屋を想定すると、
居抜きの場合で約700万円前後、スケルトンの場合で約1,100万円超が目安です。
Point:居抜きなら約700万円前後、スケルトンなら1,100万円超が目安。費用差は約400万円。
運転資金と緊急資金
開業後すぐに売上が安定するとは限らないため、6か月分の運転資金を確保しておくのが理想です。
家賃、人件費、仕入れ、水道光熱費、広告費など、営業を続けるための費用を見込んで準備します。
また、機器の故障や修繕などに備え、30万〜100万円程度の緊急資金を確保しておくと安心です。
Point:運転資金は6か月分を目安。突発出費に備え30万〜100万円の緊急資金も確保。
資金調達の考え方
開業資金は、自己資金と融資の組み合わせでまかなうケースが多く見られます。
日本政策金融公庫のデータでは、開業資金に占める自己資金の平均は約24%(約282万円)、残りは融資など外部資金が中心で、平均調達額約803万円です。
Point:自己資金は平均約282万円(全体の約24%)。融資利用が一般的で、平均調達額は約803万円。
できるだけコストを抑えて開業する方法
「居酒屋を開きたいけれど、資金面が不安」「最初から大きな借入は避けたい」
そんな方も、工夫次第で費用をぐっと抑えて開業することができます。
ここでは、初期投資を最小限にするための現実的なポイントを紹介します。
物件選びと内装費を見直す
初期費用の中でも最も大きいのが、物件と内装工事費です。
この2つをどう抑えるかが、開業コスト削減の最大のポイントになります。
前テナントの内装や設備をそのまま使える居抜き物件を選べば、スケルトン物件に比べて改装費用を数百万円単位で減らせます。
また、駅から少し離れた物件や20坪未満の小規模店舗を選ぶだけでも、家賃や光熱費を抑えられるでしょう。
Point:居抜き物件を選べば開業資金を数百万単位で削減できることも。立地を見直すだけでも固定費が下がる。
設備・備品は中古やリースでそろえる
厨房機器や什器は新品にこだわらず、中古品やリースをうまく使うことでコストを削減できます。
特に冷蔵庫やコンロなどの大型設備は、中古市場や業務用リユース業者で探すと大きな節約につながります。
初期費用を抑えた分は、開業後の運転資金に回すのがおすすめです。
運転資金を多く残すことで、突発的な修理や仕入れ増にも柔軟に対応できます。
Point:中古品やリースの導入で設備費を大幅削減できる
夢の居酒屋開業に向けて、今日からできること
居酒屋を開く夢は、決して遠いものではありません。
まずは、自分がどんなお店を作りたいのかを言語化することから初めてみてはいかがでしょうか。
イメージを固めてから、開業に必要な資格や費用の目安を知り、現実的な計画へと落とし込んでいきましょう。
少しずつ形にしていくことで、理想のお店が現実に近づいていきます。
夢の居酒屋を開く第一歩を、ぜひ今日から踏み出してみてください。
























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